てぃーだブログ › 美容外科医のこばなし

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2015年07月03日

くすりのさじ加減

フロイトは多くの医者が知っている精神分析の偉業を発表した
最初の精神科医である。

一方、カルル・コラーはフロイトより年長者で、白内障手術を局所麻酔で始めた
眼科医として良く知られている。

両者は友人で、共通でくすり(?)の薬理作用を調べ上げ、臨床に利用した事も
医学の歴史書で数多く記載されている。

そのくすりとはコカインである。

コカインは鎮痛作用は強くあるが習慣性も強い薬である。
この薬を最初に用いたのがフロイトとされている。

モルヒネ中毒患者にコカインを投与、中毒を抑え、新しい活力を全身に与えようとした。
一次的にしろ、この考え方は当時、世に広まっている。

一方、眼科医のコラーは眼の麻酔にコカインを用い、当時難しいとされていた
眼窩内手術に成功している。

両者は後世まで名を残し名誉を得ているが、終局的な人生は違っていた。

コカインの局所的使用は局所麻酔剤としての礎になったが、
全身投与のコカインはフロイト自身が依存症に悩まされ世を去っている。

結局、くすりの使い勝手の妙を示したお二人の名医でもある。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 15:24Comments(0)

2014年06月12日

皮膚移植の先駆者達

ルベルダンやチールシュ植皮術は私が医師国家試験を受験する時、
頻回に耳にした名前である。
今ではほとんど顧みられなくなったルベルダンやチールシュが考案した
皮膚移植法であるが・・・。

形成外科医になって、改めて植皮の歴史を見直すと
彼等に感嘆させられる事は多い。

スイスの若いインターン生、ルベルダンは火傷に小さな表皮を移植すると
生着すると報告し、5年後、今度はベテラン外科医のチールシュが厚い皮膚でも
皮膚移植は可能であるとルベルダンの業績を高く評価補完させたのである。

偉大な業績は偉大であるがゆえに、その成功の優秀さに気付きにくい。
第二・第三の追試があって、初めて先駆者の業績が高く評価される源となる。

あの時代から1世紀半、現代はさらに巾広い皮膚が移植可能となったが、
この方面でダーマトームと言う植皮器械を日本に導入したのが
大森清一博士であり、顕微鏡下での組織移植を世界に最初に発表したのが
波利井清紀氏である。

然し、お二人が数年間、沖縄に関わり積極的に患者さんへ植皮術をし、
貢献した事実はあまり伝わっていない。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:55Comments(0)

2014年06月06日

云うは易しく

歴代の著名人は云いえ妙なる名言を残す。

改めて読んでニヤリとほくそ笑む名言は多々あるが、
今回は昨今の政治家不信から云えるのをひとつ下記に示してみよう。

「云って欲しい事は男に頼みなさい、やってほしい事は女に頼むべし」

鉄の女、英国の保守政治家、マーガレット・サッチャーならではの言葉である。

さしずめ、現代の男が作った政治家のマニフェストは言葉だけだと云っている
ようにも聞こえて妙である。

再選を目指すオバマ大統領も“ Yes We Can ”だけでは、過去4年間の仕事を
みると次はおぼつきかねると思うのだが、如何であろうか?

医療の世界も似たようなもの。
男医が多かった過去から現在はすでに医学生の4割は女性が占めている・・・
となると、成し遂げられる病気治療の成功率は今後、女医さんの腕前に左右され
そうな勢いでもある。

口で云うほど病気の根治は易しくないが、日本の病根を治す役目の政治家も
同じ事が云える。

「云うは易しく、されど行うは難し」

改めて思い起こされる昨今の社会風情であり、己の自戒をこめて
一筆したためてみた。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:43Comments(0)

2014年06月03日

年々増加する怖い現代病

 貴方は「ノモフォビア」と云う病気にかかっていませんか?

最近では3人に2人がこの病に陥っている研究発表がイギリスでありました。

沖縄でも若い方を中心に、年々増加しているようです。怖いですネ。
貴方は如何ですか?思い当たる節はありませんか?

 実は医者である私もこの病にかかってしまったのです。
やっかいな症状で怖いのです。

フォビア(Phobia)は恐怖症と云う意味なのですが・・・。
例えば恐怖症はアクロフォビアと云います。

 現代の社会現象ともなっているこのノモフォビア症候は、
常に携帯電話を持ち歩いていないと不安になったり、
恐怖に襲われる心の病を云い当てているのです。

ノー、モービルフォンの事を指し、
携帯電話をなくしてしまった時の不安、どこに置いたか忘れてしまって
恐怖に陥っている貴方はすでに怖い病気にかかっているお話しなのです。

 すごい現代病が蔓延していると云う事が云えますネ。

治療法?ですか!
それは貴方自身が見つける事です。

 携帯電話会社もお医者様も関与出来ない
貴方自身の心の中に潜んでいる病だからです。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:53Comments(0)

2014年05月30日

メイヨークリニックから教わる事

 最近、外国の医学会に参加する事が少なく、
その為、理由を自分なりに考えた。

仕事、雑用が多く、外国の学会へ参加してもあまり得るものがない?
日本の勉強会も沢山あり、それだけで手一杯である・・・等々。

 そのような事を思い浮かべながらのある日、
日野原先生が訳された「メイヨー兄弟の格言集」を読んだ。

ページ何行目かに
「外へ旅する一番の目的は自分を向上させるにあり、
旅先であら探しをすることではない」
と記されてあった。

 メイヨークリニックは田舎町のクリニックではあるが、
ハイレベルの総合医療を打ちたて、
組織的近代医療を確立された病院として世界的に名高い。

私には遠きにありて、本でしかその詳細を知らないが・・・
日野原重明先生が推奨してやまないのも、内容を読むにつれて理解出来た。

ページをさらにめくっていくと、
「偉人から得るのは医学的技術ではなく、崇高な精神を学ぶ事が大切」
と記されていた。

 年をとると保守的になりがちだが、読み続けるうち重い腰を上げ、
明日にでも良い所を探しに外国へ旅してと云う気になってしまった。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:34Comments(0)

2014年05月26日

消費税におけるジレンマ

 現在、世間を騒がしているのが消費税であろう。

増税目的は社会保障の充実であり、
生きていく最低レベルの保障は国の責任で、
我が国の憲法にも記載されている。

 さて、生活上の困窮をカバーする制度は、
生活保護、年金、介護や医療の分野となるが、一見してお分かりの如く、
これ等はすべて国の役目で法的枠内で運用される。

然し、社会保障を支える介護や医療は国のシステムなので
値段は点数で決められるが、運営は独立採算性が強い。

云いかえれば、公設民営のような公的保険制度だから、
消費税問題となるとややこしい。

つまり、介護、医療施設は器具、薬剤の購入時に消費税を払うが、
介護や病に苦しむ方々から消費税を頂く事が出来ず損税となる。
その為、社会保障への消費税補填は介護・医療施設で痛し痒しを背負う。

一方、国策の動きによって揺り動くシステム下で働くより、
自由診療を求め多くの医師が美容市場を目指す現実がある。

然しである。美容医療の対象は患者さんではなく、お客様ゆえ、
最終消費者の方か消費税を頂く事になり、痛し痒しなのである。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:07Comments(0)

2014年05月21日

細菌学者と外科医

 近代外科手術に大きく貢献したのは、麻酔の進歩と無菌法の2つである。

今回は手術室の無菌法の始まりについて記述してみたい。

 ジフラリア・コレラ・ペスト、細菌への挑戦に勝利を導いた一人が
フランスのルイ・パスツールである。

 彼は空気中に種々なる細菌がいると発表し、
伝染病の撲滅に貢献した大家であるが、この事に注目したのが
イギリスの若き外科医、ジョセフ・リスターである。

当時、術後の感染症で亡くなる患者さんは多く、外科医の悩みの種であった。

パスツールの研究を聞いたリスターは、
手術室全部に防腐剤を撒けば空気中の細菌はいなくなると実行した。

後日、術後の感染が極端に減った結果、
リスターはパスツールに感謝の手紙を送っている。

 最近は空気感染と共に、接触感染を防ぐ無菌法へ流れは変化したが、
大学など手術室の幾つかに、部屋中すべて無菌と云う特殊な手術室が
あるのはその為である。

 フランスとイギリスが戦っていたナポレオン時代、
パスツールは「科学に国境はないが、科学者には祖国がある」
意味深長な言葉を残しているのは興味深い。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 10:46Comments(0)

2014年05月20日

リンゲル液の大切さ

 「リンゲルを打ちましょうネ」・・・看護師さんに云われたら、
お年を召された方なら点滴(電解質)の事であるのをご存じである。

 医療の進歩は多くの偶然が重なるが、リンゲル液の発明もそれに似る。

大塚製薬の同薬報によると、
現在の電解質液は動物実験中に英国医師、シドニー・リンガーの弟子が
誤って使用した水道水が起源であると記載されている。

カルシウム・ナトリウムなどを混ぜた、いわゆる電解質、
生理食塩水が「リンゲル液」の源となっている。

その割合は時代と共に変遷を重ね、リンゲル液の発達で心電図が開発され、
現在ではスポーツドリンクへの応用となるのは興味深い。

 但し、何事も偶然のみで全てがうまく運び、
ここ迄の発展に至るのではない。

そこには何故、誤って使用した水道水が心臓に力強さを与えるのか?
限りなき探究心があって始められた偉業である事は間違いない。

 当院の若い看護師さんに聞いてみたら、リンゲル液を知らなかった。

 我々、医師は新しい医学を学ぶと同時に、
過去の偉大なる先駆者の足跡を知る事こそ学びの尊さを知る事が出来る。


  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:35Comments(0)

2014年05月19日

オリンパスの事件

 オリンパス社は損失隠しで社会的批判を浴びている。
不透明な取引と会計処理は株価も暴落し、経営陣の維新も伝えられる。

医療界でも青天の霹靂で、無関心ではいられない。

援護する訳ではないが、
同社の内視鏡等々は医療界で高い評価と実績を誇っているからである。

 ライバル会社はこの時とばかりシェアーの拡大を目指すが、
追いつくのは容易ではない。

それほどオリンパスの手術用顕微鏡や内視鏡カメラは優秀であるが、
実は医者の間でオリンパス愛用者が多い理由はそれだけではない。

原因は人海戦術によるフォローアップシステムが素晴らしいからである。

技術者を含むサポート体制は、
機具の不具合があるとすぐかけつけ、いかなる時にも手を貸して下さる。

又、使い馴れる迄、訓練もする手の込みようで、
ライバル社との差は明らかとなる。

私共も時に医療機械を購入するが、
治療中の不都合に手を焼く事しばしばで、
代替機などの対応がスムーズでないと混乱する。

 このような末端職員の日頃の努力を無にした同社の執行部は、
医療界からも厳しい目が向けられているのである。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:18Comments(0)

2014年05月17日

ユニフォーム

 スティーブ・ジョブスさんが晩年愛用していた黒のタートルネックが
評判で馬鹿売れしてる・・・巷間、噂で聞いた。

 三宅一生氏のデザイン、彼は100着も注文したと聞くとビックリする。

 然し、職員にユニフォームとして採用させたら反対が多く、
結局実現していない。

人にはそれぞれ好みがあり、職種には適したユニフォームなどもある。
アイデアがあり、天才児の彼がその辺を見抜けなかったのかどうかは・・・
凡人である私にはそれこそ見抜けるものではない。

 医療現場でもいつしか看護師さんの象徴であるナースキャップは
見られなくなった。

忙しい現場では不要のものとなったのであるが、
始めて病院を訪れる方には医療の職種が分かりにくくなっている。

 医師の白衣も診察時に良くても、種々なる処置を瞬時にやらねばならない
外科医にとっては不便この上もない。

 それ故に手術着で過ごすユニフォームが自分には個性的服になる。

 この作業服、三宅一生作でもなく、
私が死んだら馬鹿売れするか定かではない・・・が、
丈夫で長持ちしてるのは確かである。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:50Comments(0)

2014年05月16日

医学の父

 ヒポクラテスは紀元前5世紀に生まれて遠い遠い昔の方である。
でも「医学の父」と云われ、今でも尊敬に値ある医者である事には違いない。

 彼の経験した医療の数々、記載されている病歴・治療の方法、
今でも・・・手を加えなくても現代の医学教科書に載せても何等おかしな事はないとされている。

 医術は迷信や呪術ではないと主張した最初の医者でもある。
昔を考えるとそれだけで医学の父の資格充分であるが・・・。

 彼は以下の如くに弟子達に教えていると伝え聞いた時に
彼の洞察力のすごさに感じる。

「外科医は常に手術道具を使えるようにしておく事、
すぐに持ち運びが出来るように整理し、点検しておく事」

・・・を命じている。
当時から外科医は昼夜の区別なく急患が来るので直ちに対応出来るよう
心構えを教えていたのである。

治療法も常に自然の治癒力を信じ、
出来るだけ簡単な処置法を選択している。

それは解剖生理学に準じて行なわれ、
骨折・脱臼治療なども理にかなっていたと云う事であるから、
私など彼の爪の垢が残っていたとしたら煎じて飲んでみたいと思っている。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 08:55Comments(0)

2014年05月15日

温故知新の美容外科

 少しの昔、沖縄にブーブーと云う習慣があった。
胎毒等(?)をとる為、カミソリで小さく切開、出血させる用法である。

今ではほとんどみられず、若い方々にお聞きすると
ブーブーを全く分からなかった。

 然し、美容外科では静かにそれに似た事が行われている。

ローラーの先に小さな針があり、それを小皺に当て、
出血させると小皺がとれると云う理屈である。

理論的には小出血によって傷を修復させる種々な成長因子が出てくるので、
小皺改善に効果があるらしい。

 クレオパトラは39才で亡くなっているが、
彼女の顔には金の糸が埋められていた。

その事から金の糸の研究が始まり、1999年ロシアで
「金糸(特殊外科糸)によるアンチエイジング」と云う論文が発表された。

 皮膚の中でコラーゲンやエラスチンなどが増え、
若返りに対する自然治癒力が働くと云う理論らしい。

但し、CTやMRIに映し出されるので、
充分なご理解のもとでないと後でやっかいな事にはなる。

この二つの療法、現在、大流行ではあるが、
いずれにしろ温故知新に似た様な事が美容外科にも存在する。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 08:46Comments(0)

2014年05月13日

鼻を作り出した第一人者

 近代ルネッサンスはイタリアで起り、ヨーロッパ全土へ広がり
「人類が自然環境と人間に目覚めた時代」、文学と芸術に始まっている。

1543年、コペルニクスが地動説を唱えた時代でもあるが・・・。

 実は「医学」のルネッサンスも同時期に始まり、
美容形成外科でも大きな仕事がなされている。

 イタリアのタグリアコッチが作成した造鼻術は有名で、
形成外科の歴史的教科書には必ず彼が手がけた図形が載っており、
美容形成外科医は目に焼きつき記憶させられている。

組織移植に欠かせないのは栄養血管の確保が基本であるが、
当時の造鼻術にもこの基本が生かされている。

脈々と現在まで受け継がれた移植外科学の源がそこにはあり、
あの時代、決闘で削ぎ落とされた紳士の鼻を造り治していたのである。

今でこそ鼻作りに女性の要望は多いが、
事の始めがルネッサンス時代から・・・と云うのは興味深い。

但し、16世紀最高の医学者であるタグリアコッチの業績が見直されたのは
19世紀に入ってからであり、地動説を唱えたコペルニクス同様、
長く長くうずもれていた歴史がある。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 14:26Comments(0)

2012年07月12日

救急車の創始者

 ナポレオン軍に偉大な外科医がいた。

ナポレオンは「私が知る限りではもっとも得の高い男である」
と彼を評している。

 彼は軍医ゆえに66の戦闘と400の交戦に参加し、
彼の遠征記録は5巻からなる著書にしたためられ、
歴史的な重大な出来事が幾つも記されている。

ここでは医療に関する事柄を示してみたい。

 戦場に於ける医療の処置室は通常、後方陣地に備えられているが、
彼は初めて馬車による軽量の救急車を考案し、
戦場を走り放置された負傷兵を運び、後方で急ぎ治療してる。

又、寒冷地方での外傷治療は冷却が化膿を防ぎ、
疼痛軽減効果がある事に気づき、後の冷凍麻酔などの研究に役立っている。

 幾多の戦場に出ていた彼は当然の如く自らも負傷し、
遂にはワーテルローの戦いで敵国に捕らえられている。

然し、相手国の外科医は彼の名声を知っており、
かつ敵国兵も助けていた事実が分かり、銃殺刑を逃れている。

その後、ナポレオン軍のフランスは破れたが、
多くの兵士はこの外科医を忘れる事はなかった。

 彼とは歴史に残るフランスの名外科医、ゴミニク・ラレーである。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:57Comments(0)

2012年06月13日

医療ツーリズム

 魅力ある言葉ではある。

韓国は国をあげて取り組んでいるし、
旅行業者が美容外科のツアーを組んで韓国まで案内するとも聞く。

沖縄でも検診事業で医療ツーリズムを取り組み始めている。

 でもである。医療が外資稼ぎの産業として成り立つには多くの壁がある。
他国が積極的にやっているから、すぐに取り組めるほど簡単でもない。

その理由は、常に手術や健康診断は追跡が大切なのである。
国を隔てるとこれが難しい。

当院にも某国の手術でやっかいな状態になって来院される方もいる。
直接主治医に電話しても片言の英語では・・・
詳しい手術内容がほしい当方にとって何の益にもならない。

ただでさえ難しい術後のトラブルは術前、術中を考慮し改善を計る。
然し、海の彼方の情報は得られにくいし、
健康診断も単年度ではあまり意味をなさない。

外地で受ける処置は帰国後のフォローをどうするのかで決まり、
その為、患者さんをないがしろにしないように前医と後医の
専門的レベルを合せ、各国の連携が必須なのである。

 焦らずに外壁を取り除く事が医療ツーリズムの第一歩となる。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:58Comments(0)

2012年06月07日

ピアスのトラブル

 現在の若者、特に女性の方で耳垂ピアスをしていない方は稀である。
この耳ピアス、一説では最古の外科手術とも云われている。

 耳飾りを含めて古代エジプト、ローマ等の遺跡からも多数、
壁画の中にピアスの女性がみてとれる。

 当時は悪霊から身を守るものとされていたようであるが、
現在は装飾的なおしゃれとなって久しい。

又、観音菩薩増や阿彌陀如来増にも耳に穴がみられるのは、
高貴なものを身につけて自分自身を高めようとしたのかもと考えた。

 古代インドにあるススルタ大医典では無知な外科医があけるピアスは
出血を伴いトラブルを生むと記載されているが、
実は現代医療でもピアス完成迄には幾多のトラブルがある。

最古の外科手術と云われながら手法完成までにまだ解決されねばならない
感がある耳垂ピアスであるが、外科手技の難しさが表現されて興味深い。

 このようにピアスをあけるのは容易だが、化膿やケロイド等々
発生した合併症対策に頭を痛める美容外科医の日常があり、
古代外科医典に穴をあける記載はあってもトラブル後の処置方法に
記載がないのが残念だった。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 16:53Comments(0)

2012年06月06日

男女差

 欧州司法裁判所が自動車の保険料に男女差があるのは違憲であると
保険会社に是正を求めた。

 実はヨーロッパの保険会社としては男性より女性の方が事故率が少ない
ので女性から頂く保険料は低く査定していたのであるが、
裁判によって女性の保険料が上り男女差がなくなるとこのニュースは伝えた。

これは誰しもが女性に同情する。

当然の事であるが、
同じにするのなら男性を下げるべきと云う意見もある。

この裁判は今後、生命保険料、年金の受給額にも影響するであろうから
更に影響は大きくなる。

 我が国でも労災保険の後遺症等級で、これ迄女性の顔の傷は男性より
重要であるとして後遺症の保険料は女性が高かった。
・・・が最近修正され男女差はなくなった。

実は形成外科領域では労災や自動保険は関係が深い。
交通事故後の傷跡の治療・処置を頼まれる事が多く、
処置内容についても保険会社と交渉したりするからである。

然し、傷を治す立場の我々は男女どちらであっても
同じようにきれいに治療をし、同じ料金設定は当たり前、
裁判所に改めて指示される筋合いのものではない。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 14:07Comments(0)

2012年01月13日

外科の基本

 ラジオ波やレーザーで皮膚を切離、
腹腔鏡や顕微鏡を利用して手術するようになってきている
昨今の外科手術には、新たな時代を迎えた進歩がみてとれる。

 過去の外科学の歴史を紐解く迄もないが、
数々の進歩の過程に3つの基本が横たわる。
解剖学の熟知、麻酔の研究、無菌的やり方である。

 外科手術は無数にあり、それぞれの専門医とチーム医療が存在するが、
前記した3つの基本を知らなければこれ迄の発展もなく、
これからの進歩もあり得ない。

この3つの基本こそが外科学の進歩に寄与し、
診断方法の進歩と共に外科治療の巾を広げている。

 このように目覚しい歩みの過程があるのに不思議な事ではあるが、
今もって人間の身体のしくみ、いわゆる解剖生理学でさえ分かっていない
事は山ほどあるのである。

貧欲な医者ほど寝る間を惜しみ、医学に勤しむ外科治療にも
創意・工夫が必要となるので面白い面も又生じる。

然し、どのようなアイデアも基本を奥深く知ってこそ生まれ出るので、
メス使いや縫い方がうまくて早いだけが外科医でもなく、
褒め言葉にもならない道理である。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 08:54Comments(0)

2011年11月24日

心の豊かさを求めて

 一度は誰しもギャラップ調査と云うのをお聞きになった事があるだろう。

米国に本社を置き、特に政治について世論調査を行なう企業である。
正確性があり、その結果については世界の人々が信頼をよせる。

 昨年、そのギャラップ社が155ヵ国を対象に住んでいる国民自身に
生活満足度調査を実施した。

驚く事にデンマークがトップで、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、
オランダと続く上位5ヶ国は全て北欧圏なのである。

 経済的発展のみならず、衣食住、医療、教育などの基本的ニーズが
満たされていると云う事であり、アメリカ大陸の中ではコスタリカのみが
上位に来て、英国17位、日本は82位である。

税金の高さや生活水準など種々なその他の要素はあるのかも知れないが、
世界的な経済不況で資本主義社会のあり方が問われる日常の生活、
心の豊かさに多くの人々が関心を持ち始めている事に
政治は早く気付くべきである。

 ゴタゴタが続く日本の政治家諸君へ

「君達自身が心の安定をもって、この国を豊かに導いて欲しい」

・・・一人の美容外科医がつぶやいた。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 15:03Comments(2)

2011年08月10日

回診

 回診と云う言葉は医療従事者なら大方の人はご存知である。
付け加えるなら病院で入院した事のある方は覚えておられる事でもあろう。

有名なのは白い巨塔に出てくる教授回診で、
先輩医師に若い医師がつらなって患者さんの様態を診て回る様である。

一人びとりの患者さんの様子を診て回りながら、
教授が弟子に教えるひと言などは重要でためになる場合も多く、
一概に無駄な事ではない。

 実は回診にも種類があって、
夜間の病棟当直は一人で入院患者さんを診て回る。
多い時には100人位の方を1~2時間の間にチェックしていくので、
その把握は容易ではない。

 私には忘れてはならない教訓がある。

悪性腫瘍の方に夜の回診、顔色だけをみて
「元気そうですネ」・・・と声かけをしてしまったのである。
即座にその方から返ってきたお言葉は厳しいお叱りのお返事であった。

「カルテを詳細に見て、患者のすべてをチェックしてから回診して下さい。
表面だけの言葉がけではいけませんよ」

苦いお薬であったが、尊いお薬を頂いたと今でも思っている。

30年前の辛い思い出である。



  


Posted by 形成会 当山美容形成外科 at 09:49Comments(0)